キーワード/健康観・健康概念、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)、健康行動、ライフスタイル、行動変容、アドヒアランス、身体活動・運動、ウェルビーイング、メンタル・ヘルス、ストレス・マネジメント、保健指導、動機づけ

Active Children 60 min

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現在、日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会で以下のような研究班で研究を行っています.今年もそろそろ報告書作成の時期が近づいてきました.私たちには、やってもやってもこういう仕事がついてまわります.

この研究の骨子は以下のようなことです.身体活動・運動の習慣を子ども達に身につけさせることは、子ども自身の「今」に役立つだけでなく「将来」の運動習慣や健康にも影響するために大変重要な課題となります.この習慣化を目指すには、ただやみくもに活動すればよいというわけではなく、まず子ども達がどのくらい身体活動・運動を行えばよいのかについての最低目標量(時間)決めることが必要となります.厚生労働省は「成人」に必要な運動所要量のガイドラインをエクササイズ2006として作成しましたが、子どもについては全く考慮されていません.そのため、子どものための身体活動・運動時間のガイドラインを作成し、その情報を共有する意義は極めて大きいといえます.
平成16年度に文部科学省子どもの体力向上事業実践協議会が全国約5万人の児童を対象に行った調査では、1日に行う運動・スポーツ、外遊びの総計時間(体育の時間を除く)が60分を超えるか否かが、新体力テストの総合評価の高低を分ける大きな要因であることが明らかにされています.この「60分」という時間は、1日に必要な最低限の活動時間として、英・米国を中心とする諸外国のガイドラインにも示されておりますが、本研究では、この「60分」をさらに根拠のあるガイドラインとして確立すべく、体力評価のみならず様々な健康指標、例えば肥満や不定愁訴、メンタルヘルスへの影響についても検討を行っています.

さて、便利で身体を動かさないですべてを済ませてしまうことができる生活、また身体を動かさないで行う楽しい娯楽などが今後も進歩していく中で、子どもにとって身体を動かすという行動にどんな意味、またどういう理由で必要なのかを考えねばなりません.体力低下をスポーツ・運動が必要だとする体力談義にしても、極端な例として、スポーツをしたくない子どもにとってスポーツを行うための体力や能力を高める必要はないと言われれば、現在のパフォーマンス重視の体力測定の存在感は揺らぎます.なぜ体力が必要なのか、疲れやすい、すぐ座りたがる、意欲がないなど身近で見られる子どもの問題を予防するための体力は、スポーツをうまく行うための体力や能力と違うはずです.健康関連体力とも言われますが、健康でいられるための体力を持たせるために必要なガイドラインとはどういうものか、量も内容もスポーツパフォーマンスのためのものとは違って当然かもしれません.従来の体力測定信奉の考え方に立てば、たとえば体力測定の内容を集中的にトレーニングさせれば確実に数値は上がります.でも、体力をつける目的は,体力測定の数値そのものをあげることではなく、本当は別にあるはずです.

この研究班ではガイドラインを作成することが目的ですが,しかし、どういう層に必要か,つまり動いている子どもと動かない子どもの2極化がますます進んでいる現状の中で、あんまり動いていない子どもを対象とするならば,体力測定の結果をよくすることを目的とする高い基準の設定は合いませんし,そうしたらそれこそガイドラインが絵に描いた餅になってしまうので,動かない子どもでもできるような最低限の基準,しかもそれでいてある程度健康指標においても効果があるというものを作る必要があります.エビデンスに基づくのも大事ですが,政策的な側面も重要です.

後,そのガイドラインを基に,ガイドラインの普及ではなく,それも含めて身体活動の習慣づけを目指した普及活動の方法を考えていくというのがわが研究班の主眼とするところです.作成したガイドラインも運動・身体活動の普及啓発のいちツールと考えるわけです.運動実践や身体活動量増強の普及であっててガイドラインの普及じゃありません.

こういうことを考えながら報告書の原稿をどのように構成していくかをぼんやりと考える今日この頃です.

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以下の動画は,早稲田大学応用健康科学研究室(代表:竹中晃二)が製作したものです。イベントなどでお使いの場合は,その旨を明示してお使いください。

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