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自己紹介(岩田明子監事)

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 はじめまして。監事の岩田明子と申します。専門は伝統藝術の茶道で、大学で非常勤講師をしています。その他に、毎週高齢者生活支援のボランティアや認知症の方へ茶道を教えています。自己紹介をということなので、今回は活動の一つ、認知症ライフパートナーの立場から、認知症の方へのアクティビティ・ケアの実践として、茶道の取り組みを紹介したいと思います。

 4年前から現在80代のご夫妻に茶道を教えています。詳細は避けますが奥さまは要介護認定を受け、認知症で医療機関を受診中。夫婦二人暮らしでご主人が奥さまを支えながら生活しています。認知症になると程度の差はあれ、ほとんどの方に記憶障害がみられます。学習や練習によって身につけた技術や作業など「身体で覚える記憶」を手続き記憶といいますが、アルツハイマーになられても手続き記憶は失われにくいことが知られています。茶道の点前は型を繰り返し反復練習し「身体で覚えていく」ものです。奥さまは学生時代に茶道を学んでいた経験があり、毎週1回の稽古を続けていくうちに現在は帛紗捌きや道具の位置、柄杓の扱い、茶筅通し、茶碗の清め方などができるようになりました。ただ、物事の手順や段取りがわからなくなる部分がありますので、点前をする時は一つ一つ隣で手順を伝えながら進めています。
 奥さまの点てたお茶はご主人が召し上がります。ご主人は「美味しい」「家内のお茶を点てる手つきは本当にいい」とたびたび話され、その度に奥さまはいつもほほ笑まれます。点前だけが茶道の稽古ではありません。稽古の時は我が家の庭の花を持参しますので、花を入れていただきます。また季節感のある菓子を盛りつけ、点前をして、菓子や抹茶を味わい、ご主人からあたたかい言葉をいただく、これらは充足感につながり、奥さまの自信を取り戻す手助けになっていることと思います。稽古が終わると「楽しかった」「頭をいっぱい使った気がする」と話されます。ご主人は「家内はお茶のお稽古と娘と電話で話す時は機嫌がいい」とおっしゃいます。お稽古を始めた頃は頻繁に嫉妬妄想などBPSDの症状がみられていましたが今は落ち着いています。このご夫妻の場合、介護者であるご主人へのねぎらいの言葉や話を聞くことも大切にしています。
 アクティビティ・ケアで大切なことは、「日々の暮らしの中で、アクティビティが生活行為の習慣の一つとして取り入れられるようにすること」です。ご親族が来訪された時に茶を点ててふるまわれたり、居間や玄関に花を活けたり、ご主人は抹茶碗を買うのを楽しまれたりと、茶道が生活の一部になっているのを感じます。今後は可能であれば、効果・評価方法などにご協力いただき、奥さまの「今できている」部分を大切に伴走していければと思います。

岩田明子/博士(芸術学)・茶道裏千家教授、著書:『現代語でさらりと読む茶の古典 源流茶話』淡交社、分担執筆:『茶室露地大事典』監修中村昌生 淡交社

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