14 Jun 2012
最近,子どもを対象に,からだを使った自由遊びがメンタルヘルスに与える影響に関する論文を集中的に読んでいます.
従来,子どもに行わせる運動は,体力が低下してきたから,また運動能力が落ちてきたからという「体育」的目的,また肥満予防という「公衆衛生」的目的が中心でした.しかし,子どもがからだを動かして何かを行うということには,こういう2つの目的以外に,友人との軋轢を経験しながら社会性を身につけたり,ばあっと暴れて嫌な気分を発散して,その後に落ち着きを取り戻す,メリハリが効いて集中力が高まる,また創造性やメンタルヘルス改善の効果など,子どもをよく見ている人たちは経験的に,また直感的にわかっていたのだと思います.しかし,客観的な評価が行われてこなかったことで,何となくそう思いながら,でもスポーツなどやらせた方が恰好がよいので親はそちらに目が行っていたように思います.
体育やスポーツ競技は,どちらかと言えば,「何かのために行う」という目的指向の活動であって,しかし昔,子どもが行っていた自由遊びは別に目的があって行ってきたことではありません.そのこと自体が子どものこころの癒しになっていたり,社会性などを育ててきたのだと思います.
しかし,近年は子どもだけで公園遊びをさせるには安全と言えず,大人も忙しくなって,時間の感覚が速くなっているので,子どもにゆっくりとつきあってやれなくなり,週末には家族でモールに行って,お買い物や食事を楽しむということになってきました.そして,ますます,子どもの自発的なあそびがなくなってきて,一方で,スイミングスクールやサッカー教室に参加させたらそれでよいということになっています.でも,目的指向の活動,スキル獲得の活動は,目標が達成できたりするとよいのですが,子どもにとってそんなに楽しいものではなく,例えばスイミングスクールで泳げるようになったら,友人が止めたら自分も止めるという,習い事程度になってしまっています.スイミングスクールに通う子どもに笑顔がみられるのは,泳力検定後の自由遊泳っていう時です.まして,指導者は見学に来ている親に規律あるスポーツ活動を見せなければならず,悲しいことに,子どもの笑顔は,自由遊泳でしか見ることができません.自由遊泳も毎日少しずついれてあげれば,子どもの笑顔がもどってきて,それがスクールにつなぎ止めるのに役立つのにと言いたくなります.
さて,昔の自由遊びの復活はかなわないにせよ,昔の自由遊び的な活動に近づけるように大人が仕掛けていく,そこに心理社会的な効果がでてくることを期待して研究を計画し始めています.スポーツ競技も子どもには夢があってよいし,体育授業の中で「できる」ようになる感覚もよいし,そして自由に好きなことをあれこれやれるのもよいし,で,これしか認めないではなく,バラエティを増やすことが重要です.運動や身体活動の量的観点から質的観点に転換する,こういう研究を指向しています.
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