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日本禁煙科学会第3回大会心理学分科会のお知らせ

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以下のシンポジウムが開催されます.私も「いっちょ噛み」します.

テーマ「禁煙をサポートする心理学」

日時:2008年11月16日(日)午前9時~11時
場所:聖路加看護大学 第二会場(100人入り教室)
(詳細はホームページを確認ください)

企画、司会:大阪人間科学大学大学院健康支援センター 山田冨美雄

主旨:
喫煙者に働きかけて禁煙を決断させ、禁断症状を乗り越えて禁煙行動を継続するように指導し支える仕事は、行動原理を隅々まで知った心理士にぴったりである。にもかかわらず、禁煙科学の分野で活躍する心理士の方法論や評価系が他の領域のように一枚岩でない。ニコチン依存はれっきとした病気なので、効果の立証された治療技法を確立するためは、私たち心理学の専門家の協力は必須であろう。ニコチンパッチを用いた代替療法とパンフレット配付だけで禁煙治療と唱うことは、私たちにはできない。予防から教育、指導から治療援助にいたるあらゆるステージで有用な行動科学に基づいたマニュアルの整備を行うために、この分科会を企画した。今回は、こうした主旨に沿って、シンポジスト各位が実践している具体的な介入技法を紹介し、アセスメントツール開発のノウハウを話す。分科会の成果は、日本禁煙科学会心理学分科会推奨マニュアルとして広く普及をめざして開示することになろう。

話題提供

山田冨美雄(大阪人間科学大学大学院健康支援センター)
禁煙指導される喫煙者の心理:ストレスマネジメント教育の必要性

竹中晃二(早稲田大学人間科学学術院)
禁煙指導におけるヘルスコミュニケーションの適用:ソーシャルマーケティングと再発予防

堤 俊彦(近畿医療福祉大学)
禁煙動機としての子どもへの介入

大野太郎(関西福祉科学大学)
職場復帰を目指す人たちにとっての禁煙活動と心理的働きかけ

指定討論
高橋裕子(奈良女子大学)
禁煙マラソンに見るストレスマネジメント

抄録

禁煙指導される喫煙者の心理:ストレスマネジメント教育の必要性

山田冨美雄(大阪人間科学大学大学院健康支援センター)

大学で禁煙指導の実践を行って2年になる。2007年4月には念願の学舎内全面禁煙化を明文化した。新入生への禁煙教育、既存喫煙学生への禁煙支援、禁煙マラソン実施、毎月第一週の学内・キャンパス周辺道路のポイ捨てたばこ拾いキャンペーン、喫煙場所でのマナー向上標語掲示など、基本事業は順調である。そろそろ成果が見え始めてもよいころなのだが、喫煙学生がなかなか禁煙支援を求めてこない。喫煙者の心理に焦点を当てた、ホットな取り組みが今必要だと感じている。私たちの禁煙キャンペーンの構成要素そのものに、何らかの問題がはらんでいるのかもしれない。そこで本報告では、喫煙者へのストレスマネジメント教育介入による禁煙支援という新企画について、私たちの試行錯誤の経過を報告し、心理学的禁煙支援の神髄となる議論をおねがいしたい。

禁煙指導におけるヘルスコミュニケーションの適用:ソーシャルマーケティングと再発予防

竹中晃二(早稲田大学人間科学学術院)

ヘルスコミュニケーションとは,行動科学,社会科学,マスコミュニケーション,マーケティングなど様々な領域における知見を使用して行う健康行動変容アプローチの一つである.本発表では,禁煙指導におけるヘルスコミュニケーションの適用として,ソーシャルマーケティングと再発予防について議論を行う.ソーシャルマーケティングでは,対象者を一律に捉えないで,ターゲットとする対象者の特徴や行いやすさを見極めて,また対象者をある特徴に分け,複数のセグメントに応じたアプローチを行うことで禁煙指導の効果を上げようとしている.一方,再発予防には,禁煙指導プログラムにおいて,禁煙時に生じる喫煙衝動・渇望のコーピング法をあらかじめ教授することが含まれる.現在の禁煙指導は,禁煙を始めさせることには積極的であるが,一方で一度禁煙を始めた人が再び喫煙を行い,禁煙を断念してしまうケースについては目を向けていない.また,禁煙に成功した人のエピソードは体験談として頻繁に紹介されるものの,禁煙に失敗した人の話はほとんど取り上げられていない.禁煙に成功した人でさえ,数回の再発を繰り返して止めていく.以上のように,ヘルスコミュニケーションの適用によって,行動変容を意図して,単に知識伝達・指示型の指導ではないアプローチが可能となる.

禁煙動機としての子どもへの介入

堤 俊彦(近畿医療福祉大学)

最近のわが国の喫煙の特徴のひとつに,喫煙開始の低年齢があげられている.未成年者の喫煙の増加を防ぐには,早い時期での禁煙教育が必要となる.喫煙者は,喫煙行為を正当化する傾向があるが,未成年は特に,周囲の大人の喫煙による影響が強く,たとえば家族に喫煙者がいる場合,児童生徒の喫煙に対する認識を喫煙者側に移行させ,喫煙の誘因となると考えられている.実際,親の喫煙が子どもの喫煙開始と本数増加を促すことが知られている(Bricker et al.,2006).このような場合,自己の禁煙と社会の禁煙推進に対して抑制的な行動をとりやすくなり,禁煙教育に抵抗するようになる.そのため,喫煙は身体に悪いとわかっていても,直ちに健康被害に結びつかないことが,喫煙開始や喫煙継続の強化要因になりうる.こうした状況において,大人(親)や地域が禁煙教育に取り組むことの意義は大きい.ここでは,そうした健康教育的介入の実効性を高めるためのモデルとして,応用行動分析理論に基づいた強化や消去の視点から,子どもの喫煙予防について話題を提供する.

職場復帰を目指す人たちにとっての禁煙活動と心理的働きかけ

関西福祉科学大学 大野太郎

昨年の当学会においては「職場のメンタルヘルスと禁煙(EAPの現場から)」をテーマに、抑うつ状態から脱して職場復帰を目指す人たちの喫煙状況と禁煙への準備性について述べた。その中で、抑うつと禁煙の拮抗的関係を示すとか、抑うつ状態の人は禁煙することが難しいという資料など禁煙活動に対するマイナス的視点をもとに、復職支援活動における禁煙教育の困難さが紹介された。抑うつを主症状とする休職からの回復を目指す人には、健康を維持しながら社会環境に再適応することが求められる。回復期の人たちにとっては禁煙による不健康状態を避けることは強く望まれる習慣づけ行動であり、禁煙も含めて健康行動を獲得して社会復帰することは当然の目標となる。しかし、禁煙を目指すことによって新たな負荷を人に課することになるかもしれない。このアンビバレントな状況をもとに復職支援活動を行うための方策としては、個人の心的負荷を規準にした心理的働きかけを考えていくことが重要かも知れない。本シンポジウムでは、禁煙活動において個人の状況に応じた心理的働きかけについて考えられるところを述べてみたい

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